当たらない「未来」を考える

SFが魅せる世界

「今から10年前、このコロナ禍の世界を誰が予想できただろうか」最近改めてそう思う。世の有識者と呼ばれる人があらゆるメディアで、色々な未来予測をしている。そしてそのほとんどが当たらない。

 

変化の早い今の社会において、未来を正確に予測するのは不可能だ。未来予測に一定以上の正確性を求めても意味がない。大事なのは正確性ではなく「考える」ことである。鵜呑みにするくらいなら見ないほうが良いと思っているが、自分で考えるきっかけにはなる。

 

人間は昔から未来を考えて楽しんできた。それが「SF」である。空を飛ぶ車、機械化した人間、高度な知性を持った機械。沢山の作家が多様な未来を描いており、その一部は既に現実のものとなっている。もちろん空想上の世界だが、今の延長線上に「ありそう」だからこそ、見る人を楽しませているのだ。

 

アメリカのSF作家P・K・ディックは『トータルリコール』で「実際に体験していないことを人工的に記憶に上書きできる世界」を描いている。主人公が「火星に旅行した記憶」を購入するところからストーリーは始まる。自分の感覚や記憶、認識を本当に信頼できるのか?そんなことを考えさせてくれる。

 

作品の世界を楽しみ、そして今と照らし合わせて自分なりに考える。それこそSFの醍醐味である。未来予測もSFも現実になるかどうかは問題ではない。その世界に触れたときに何を感じ、何を考えるかが重要なのである。

 

(ライター よっしー)